ガールズちゃんねる
  • 9380. 匿名 2024/04/29(月) 22:07:44 

    >>8485 つづき ⚠️解釈🌊
    「チョコが溶けるその前に」8

    何処の馬の骨ともわからない私を引き取ってくれる家や奉公先などみつかるわけもなく、結局このまま冨岡さんの屋敷に住まわせてもらうことになった。住むなら鬼殺隊としての役目を果たさないといけないわけで、隠のお手伝いとしての日々が始まった。
    と言っても現代ではゆるゆるな女子高生として生きていた私は、毎日のように怪我人の応急処置や薬の調達、細々とした雑務をこなすだけでいっぱいいっぱいで、自分がこれまでどれだけ恵まれた環境にいたか思い知らされた。
    「もう…無理…」
    今日からモブ原さんに付いていよいよ任務に出る。その前の準備の段階ですでに疲れてしまい縁側でうとうとしていると、モブ原さんが声を掛けてきた。
    「ガル子さん大丈夫ですか?お茶を淹れましたのでちょっと休憩しましょう」
    「わぁ…モブ原さん優しい。どこかの鬼とは大違い」
    「その鬼さんから、ガル子さんに差し入れですよ。お好きだと言っていた、チョコレイトです」
    「え、冨岡さんからですか!?」
    「はい、たくさんありますからどうぞ」
    どういうつもり?冨岡さんが?私に"痩せたほうがいい"と冷たく言い放ったあの冨岡さんが?(根に持ってる)
    「あっわかった、どうせ誰か女の人に持っていこうとしたのを、要らないとか言われたんだ」
    「違いますよ。ああ見えて、水柱なりに少し反省されてるようです」
    モブ原さんの話によると、私に処置が下手だとか痩せろだとか言ったのを偶然聞いてしまったモブ原さんが、冨岡さんをちょっと窘めてくれたらしい。
    「それで、ガル子さんはチョコレイトがお好きなようですとこっそりお伝えしたら、なんとこれを」
    「モブ原さん…あの冨岡さんを手のひらで転がしてるんですか!?凄い!」
    「転がしてるというか、実は私の方が水柱より二つ歳上ですので。水柱は少々…女性との戯れが多く言葉がきついところもありますが、許してあげてください」
    「…た、食べ物に罪はありませんから、いただきますけど…」
    信じられない。私を見るなり「鈍い」だの「遅い」だの「下手」だの辛辣な言葉を吐くあの褌男が?てかさ、あなたの褌誰が洗ってると思ってるの?華のJKの私なんですけど??
    「いただきます!!」
    一粒一粒仕切られている上品な箱からこれまた上品そうな小粒のチョコをひとつ手に取り口の中に放り込む。
    「ん!?大正のチョコも美味しいですね!」
    「ガル子さん…本当に未来から?」
    そっか、モブ原さんにはもう知られたのか。
    「そうですよ、冨岡さんは信じてくれないんですけどね」
    「私は信じますよ。なんとも不思議なことですが、これまでのガル子さんの言動を思い返すといろいろと合点がいきます。…大変でしたね」
    モブ原さん…なんて良い人なの。モブ原さんこそ私の理想の彼氏像では?
    「それにしても、美味しいですねこのチョコ」
    「なんでも銀座の高級菓子屋の限定もののようです。かなりお高いと思います。さすが柱です」
    「ふ、ふーん…柱ってお金持ちなんですね」
    「柱は無限にもらえますからね」
    「むげんに∞!?すご!」
    だからあんなに女の子にモテモテなの!?それで顔が良くて、柱で?い、いけすかない〜〜。あんな女たらしよりも、モブ原さんのほうが優しいし気が利くし仕事は出来るし最高じゃないの。いつも布で顔を覆ってるけどイケメンなのがわかるし、背も高いし。なんでみんなわざわざあんなチャラチャラしたやつに?
    「しかも、ここだけの話、柱ともなると買い物は私達隠が代理で行くことが多いんですが、今回は水柱が自ら開店と同時に並んで購入されたようですよ。水柱なりのお詫びです」
    「……そうなんですか」
    こんなんじゃ騙されないんだから。さっきだって、屋敷の裏口から女の人が泣きながら帰ってくの見かけたし。どうせ酷いこと言って泣かせたに決まってる。そんな人が、ちょっとお菓子買ってきたくらいで絆されないんだから。
    「……このチョコ、ちょっと苦いですね」
    「…ガル子さんにとっては、大人の味ですかね」
    口の中で混ざり合う苦味と甘さが、いつもの辛辣な冨岡さんとこのチョコを買ってきた冨岡さんのようで、モブ原さんが淹れてくれたお茶で無理矢理喉奥に流し込んだ。

    つづく

    +29

    -4

  • 9404. 匿名 2024/04/29(月) 22:23:28 

    >>9380
    続き楽しみにしてます!!

    +17

    -0

  • 9420. 匿名 2024/04/29(月) 22:37:39 

    >>9380 つづき ⚠️解釈🌊
    「チョコが溶けるその前に」9

    初任務は散々だった。
    隠見習いなので、剣士とは違い鬼と直接対峙するわけではないが、怖いもんは怖い。初めて人喰い鬼を目の当たりにして腰が抜けそうになりながら、待機中に木陰から見た光景は信じられないものばかりだった。そんな中で私はモブ原さんの手伝いをするので精一杯で、何がなんだかわからないまま気づいたら朝を迎えた。
    任務の緊張が解けたからか、屋敷に戻って死んだように眠った。こんなに寝たのはこちらに来て初めてだった。お父さんやお母さん、お姉ちゃんの夢を見た気がする。未来の私達の平和な生活は、この時代に鬼殺隊がこうして体を張って守ってくれた上で成り立っていると思うと目が覚めてから涙が出た。
    剣士の人たちは強くて幸いにも被害者は出なかったが、中でも冨岡さんは別格だった。
    「あのチャラ男が…」
    「お強いでしょう、冨岡さん」
    紅茶を運んできてくれたモブ乃さんが、くすくすと笑っている。
    今日は非番と言われ、私はまたこっそりモブ乃さんのお店に来ていた。
    「悔しいけど、強かったです。悔しいですけど!」
    「私も、守っていただいたの。冨岡さんとはそれからのお付き合いね」
    「そうだったんですか?」
    そういや二人がどうやって知り合ったのか聞いてなかった。てか、守っていただいたということは。
    「まさかモブ乃さんも、ご家族を鬼に…?」
    「…ええ。主人がね。それで、いよいよ私がって時に、ぎりぎりで冨岡さんが」
    「モブ乃さん、ご結婚されてたんですか!?」
    「ええ。結婚したばかりだったわ」
    「……」
    突然幸せを奪われて、どんな気持ちだっただろう。モブ原さんも、屋敷に居る他の隠の人たちも、任務に居た剣士の人たちも、ほとんどが家族を奪われた人たちだと聞いた。きっと急に違う時代に来てしまった私とは比べものにならない悲しみや寂しさがあるのだろう。
    「ごめんなさい、辛いお話をさせてしまって」
    「ガル子ちゃんは悪くないわ。それに、私はガル子ちゃんと話しているのが楽しいのよ」
    「ほ、ほんとですか?」
    「…私には、妹がいてね。事情があってしばらく会っていないけれど、ガル子ちゃん、妹にちょっと似てるの。明るくて、良い子だった。だから妹と話してるみたいで、楽しいし懐かしい気持ちになるの。あ、気分を悪くしたらごめんなさいね」
    「私も、姉がいるんです!モブ乃さんみたいに、優しくて。その、私もお姉ちゃんと話してるみたいで楽しいし、なんだか安心します」
    「良かった。こちらに来て、不安なこともあると思うの。何かあったら、なんでも話してね」
    そう言って微笑むモブ乃さんが綺麗で、思わずじーっと見つめてしまう。
    「どうかした?」
    「モブ乃さん、すごく綺麗で憧れます。男の人にモテモテなんだろうなぁ、羨ましい。私なんて振られてばかりで」
    「まぁありがとう。でも、そんな事無いわよ」
    「ええ!?私が男ならほっとかないですよ!冨岡さんなんてこんな綺麗な人が近くにいるのに、毎晩いろんな女の人と遊んでて信じられないです!この街でも遊んでるんですよね?」
    私がモブ乃さんの店に来る途中、色っぽい女の人たちに何度か「あんた冨岡さんの女?」やら「冨岡さんにまた来てって伝えて」やら声を掛けられた。つまりこの街でも遊んでるのだあの人は。
    「…私は、冨岡さんには相応しくないわ」
    「そんなことないですよ!逆です!冨岡さんのほうがモブ乃さんに相応しくないです!!」
    「まぁ…それなら、私と冨岡さんが付き合わなくてガル子ちゃんからすれば良いことじゃないの」
    「!!…そ、そうですけど〜!」
    たしかに、私は何をこんなにムキになっているのだろう。でも何か腑に落ちないのだ。あんなに女遊びしている冨岡さんが、なぜかモブ乃さんにだけは手を出さない。屋敷に出入りしている女の人の中には過去に冨岡さんが鬼から助けた人もいるようだった。それなのにモブ乃さんには、手を出すどころか藤の花のお守りをわざわざ持参するだけだ。でもなんとなく、冨岡さんとモブ乃さんの間には何かあるような雰囲気を感じ取っていた。
    そして、その勘はやはり当たるのである。

    つづく

    +29

    -8

  • 9473. 匿名 2024/04/29(月) 23:21:43 

    >>9380
    ガル子ちゃん冨岡さんの褌洗ってるの😂

    +18

    -5